異人館の洋館建築、旧居留地のクラシカルな街並み、教会をリノベーションしたカフェ。神戸は、デザインと建築を愛する旅人にとって、まるで宝箱のような街です。港町ならではの開放感と、明治から昭和にかけての洋館が織りなす独特の景観は、日本のどの都市とも違う空気を持っています。
私が神戸を初めて訪れたのは、建築雑誌の取材で北野異人館を巡ったときのこと。風見鶏の館のアール・ヌーヴォー調の内装に息をのみ、フロインドリーブの教会建築カフェでコーヒーを飲みながら、「この街には何度でも通いたい」と心の底から思いました。旧居留地では、大正から昭和初期のビルが現役で使われている姿に、建築好きとして胸が熱くなったものです。
今回は、そんな神戸の魅力をデザイナーの視点で1泊2日に凝縮してご紹介します。洋館建築と建築カフェ、南京町の食べ歩き、神戸スイーツ、そしてシメは有馬温泉。建築もグルメも温泉も、全部欲張りに楽しむ神戸旅へ出かけましょう。
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1. 神戸観光の基本情報
神戸へのアクセス
神戸への玄関口は、新幹線なら新神戸駅、飛行機なら神戸空港です。東京から新幹線のぞみで約2時間30分〜2時間50分、1時間に3〜4本運行しているのでアクセスは抜群。新神戸駅から繁華街の三宮までは地下鉄で1駅、わずか2分で到着します。大阪からならJR新快速で約21分と、京都観光のついでに立ち寄るのにも最適な距離です。
神戸観光に便利なエリア
神戸観光の主要エリアは、山側の「北野異人館」エリア、都心の「三宮・元町」エリア、海側の「メリケンパーク・ハーバーランド」エリアの3つ。コンパクトな街なので、徒歩と市内バスで十分に回れます。観光周遊バス「シティーループ」は1日乗車券800円で17箇所を巡回し、異人館から南京町、メリケンパークまで効率よく移動できます。
おすすめの滞在エリア
宿泊は三宮駅周辺がベスト。北野異人館へは徒歩15分、南京町へは徒歩10分、有馬温泉にも神戸電鉄で30〜40分と、すべての観光拠点へのアクセスが抜群です。温泉を満喫したいなら、有馬温泉の老舗旅館に宿泊するプランもおすすめです。
2. 北野異人館街で洋館建築に酔いしれる
異人館街の歴史と見どころ
北野異人館街は、1868年の神戸港開港以降に外国人が居住した洋館が集まるエリアです。現在も約16館が一般公開されており、エリア全体が伝統的建造物群保存地区に指定されています。三宮駅から坂道を15分ほど上っていくと、まるでヨーロッパの丘の上の住宅街に迷い込んだような風景が広がります。
風見鶏の館(国指定重要文化財)
北野異人館のシンボル「風見鶏の館」は、1909年にドイツ人建築家ゲオルグ・デ・ラランデが設計した洋館。赤レンガの重厚な外壁と、室内のアール・ヌーヴォー調の繊細な装飾の対比が見事です。暖炉のタイルワークや天井のレリーフなど、細部まで行き届いた意匠は建築好きなら必見。2025年7月に耐震改修を終えてリニューアルオープンしたばかりです。入館料は大人500円。
萌黄の館と、うろこの家
風見鶏の館のすぐ隣に佇む「萌黄の館」も国指定重要文化財。1903年築のアメリカ総領事の邸宅で、その名の通り淡い萌黄色の外壁が美しいコロニアル様式の建築です。2種類の異なるベイウィンドウ(張り出し窓)を見比べるのも建築ファンならではの楽しみ方。
さらに坂を上ると、天然石のスレートが魚のうろこのように外壁を覆う「うろこの家」が現れます。国登録有形文化財に指定された神戸で最初の公開異人館で、併設の展望ギャラリーからは神戸の街と港を一望できます。複数の異人館を巡るなら、うろこグループの「プレミアムパス」(7館+展望ギャラリーで3,000円)がお得です。
2024年オープンの新スポット「神戸北野ノスタ」
異人館巡りの合間にぜひ立ち寄りたいのが、2024年11月オープンの「神戸北野ノスタ」。廃校になった旧北野小学校をリノベーションしたグルメ複合施設で、関西初出店のショコラトリーや灘五郷の日本酒が楽しめる「灘五郷 SAKE VILLAGE」など7店舗が入っています。廃校リノベという建築的な面白さも必見です。
3. 旧居留地のクラシカルな街並みを歩く
近代建築の宝庫
北野が「山の洋館」なら、旧居留地は「街の洋館」。神戸港開港と同時に整備された外国人居住・就労エリアで、整然とした街路に大正から昭和初期の重厚な石造りビルが立ち並びます。ハイブランドのショップやギャラリーが入居する現役のビルを眺めながら歩いていると、まるでヨーロッパの金融街を散策しているような気分になります。
見逃せない名建築たち
「旧居留地十五番館」は1880年頃築の旧アメリカ領事館で、居留地時代の建物として唯一現存する国指定重要文化財。阪神・淡路大震災で全壊後、部材70%を再利用して免震構造で再建された復興の象徴です。
特に推したいのが「神戸商船三井ビルディング」。1922年竣工、渡辺節と若き日の村野藤吾が手がけたビルで、日本初のテラコッタ外壁が見事です。ただし2027年6月末に閉館予定。この大正ロマンを味わえるのは今のうちです。ほかにもヴォーリズ設計の「旧居留地38番館」や、ステンドグラス天井が美しい「海岸ビルヂング」など見どころが続きます。
4. 教会が変わったカフェ? 神戸の建築カフェで至福のひとときを
フロインドリーブ本店(国登録有形文化財)
神戸の建築カフェといえば、まずここ。フロインドリーブ本店は、1929年竣工の旧神戸ユニオン教会をそのままベーカリーカフェにリノベーションした、建築好き垂涎のスポットです。設計はウィリアム・メレル・ヴォーリズ。ゴシック様式の礼拝堂にハーフティンバー・スタイルの牧師館が寄り添い、正面には鍾塔がそびえます。
1階はドイツパンのベーカリーショップ、2階がカフェスペース。かつての礼拝堂がそのままカフェ空間になっていて、10メートルを超える天井高に思わず息をのみます。アーチ型の窓から差し込む光の中でいただくサンドイッチやケーキは、空間ごと味わう贅沢な体験。創業者は第一次大戦中にドイツから捕虜として来日し、その後神戸でパン屋を開いたという歴史も。2024年に創業100周年を迎えました。営業は10時から、水曜定休。
旧ムーア邸で異人館カフェ体験
北野異人館街の中にも、建築カフェが点在しています。1898年築の「旧ムーア邸」は、白いオイルペンキ塗りの木造洋館をカフェラウンジとして開放。明治の面影を残す空間で、カフェ・グルマン(8種のスイーツ盛り合わせ、3,300円)や季節のパフェを楽しめます。窓の外に広がる北野の街並みを眺めながらの午後のひとときは、まさに贅沢そのものです。
5. 南京町で食べ歩きグルメ三昧
日本三大中華街のひとつ
旧居留地から歩いてすぐの南京町は、横浜・長崎と並ぶ日本三大中華街のひとつ。東西約200メートル、南北約110メートルのコンパクトなエリアに約100店舗がひしめき合い、食べ歩きグルメの宝庫となっています。異人館や旧居留地の洋風建築からガラリと雰囲気が変わる、このカオスな活気もまた神戸の魅力です。
はずせない定番グルメ
南京町で絶対に外せないのが、1915年創業の「老祥記」の豚まん。小ぶりながらも肉汁がじゅわっとあふれるジューシーな餡は、100年以上愛され続ける味。行列は覚悟の上ですが、並ぶ価値は十分にあります。ほかにも「YUNYUN」の焼き小籠包、「朋榮」の角煮バーガー、「神戸コロッケ」のサクサク揚げたてコロッケなど、小銭片手にハシゴするのが南京町流の楽しみ方。食べ歩きの先に、パンダシューで知られるスイーツ店「エスト・ローヤル」もチェックしておきましょう。混雑を避けるなら、平日の午前中がおすすめです。
春節祭でさらなる賑わいを
毎年旧正月の時期に開催される「南京町春節祭」は、獅子舞や龍舞、中国伝統芸能が楽しめる華やかなイベント。2026年は2月17日、21日〜23日の4日間開催です。中国の旧正月ならではの熱気に包まれた南京町は、いつにも増して活気にあふれ、異国情緒たっぷりの写真が撮れます。
6. 神戸スイーツとパンの文化を味わう
パン支出額日本一の街
神戸は、1868年の開港以来、外国人とともに発展したパン食文化の街。総務省の家計調査ではパンの年間支出金額が日本一を記録しており、街を歩けばあちこちにベーカリーが目に飛び込んできます。
1946年創業の「イスズベーカリー」は、生クリームとヨーグルトで仕込んだ食パン「エンペラー」が看板商品。同じく1946年創業の「ケルン」は、ソフトフランスにミルクチョコをサンドした「チョコッペ」が累計2,000万本以上を売り上げる不動の人気ナンバーワンです。そして前述のフロインドリーブでは、100年の伝統を受け継ぐドイツパンを1階ショップで購入できます。
神戸三大パティスリー
甘いもの好きなら見逃せないのが、神戸っ子が認める三大パティスリー。世界大会優勝の平井シェフが手がける「L’AVENUE(ラヴニュー)」は、開店前から行列ができるフランス菓子の聖地。「メレンゲの魔術師」と呼ばれる林シェフの「パティスリー モンプリュ」は、パリの街角を思わせる店内でいただくケーキが絶品です。名物ミルクジャムで知られる「パティスリー アキト」も含め、どの店もデザインへのこだわりが感じられる美しいお菓子が並びます。デザイナーとして、味だけでなくお菓子の造形美にも目を奪われるのが神戸のパティスリーです。
7. メリケンパークとポートタワーのウォーターフロント
BE KOBEモニュメント
山の異人館から海辺へ。メリケンパークのシンボル「BE KOBE」モニュメントは、阪神・淡路大震災から20年を機に生まれた「神戸の魅力は人である」というメッセージが込められています。2017年に設置され、今や神戸を代表するフォトスポット。24時間見学自由なので、夕暮れ時に港の夕日とともにシルエットを撮るのがおすすめです。
リニューアルした神戸ポートタワー
2024年4月にリニューアルオープンした神戸ポートタワーは、生まれ変わった神戸のランドマーク。地上約100メートルの屋上デッキ「Brilliance Tiara」からは、360度ガラス張りのオープンエア回廊で六甲山系と神戸港のパノラマを堪能できます。展望3階の回転カフェ&バーでドリンクを楽しみながら景色を眺める贅沢も。展望フロア1,000円、屋上デッキ付き1,200円です。
ハーバーランドの夜景
メリケンパークからハーバーランドへ海沿いを散歩すれば、umie、モザイク大観覧車、そして港の夜景が広がります。ライトアップされたポートタワーと、海面に映る光の帯。神戸が「100万ドルの夜景」と称される理由が、ここに来ればわかります。
8. 有馬温泉で極上の湯浴み
日本三名泉の実力
神戸観光に有馬温泉を組み合わせないのはもったいない。三宮から神戸電鉄で約30〜40分、下呂・草津と並ぶ日本三名泉にして日本三古泉のひとつに数えられる名湯が、こんなに近くにあるのです。観光で歩き疲れた体を、極上の温泉が癒してくれます。
金泉と銀泉、2つの名湯
有馬温泉の最大の特徴は、泉質の異なる2種類の温泉を楽しめること。「金泉」は含鉄ナトリウム塩化物強塩高温泉で、湧出時は透明ですが鉄分が空気に触れることで茶褐色に変化します。塩分が肌に皮膜を作るため体が芯から温まり、湯冷めしにくいのが魅力。一方の「銀泉」は炭酸泉とラドン泉で、無色透明のさらりとした湯が新陳代謝を促進してくれます。
日帰りで銀泉を楽しむなら「銀の湯」(大人700円、平日550円)がおすすめ。金泉・銀泉の両方を満喫したいなら、大型施設「太閤の湯」(大人2,715円〜)で一日ゆっくり過ごすのも贅沢です。なお、金泉を楽しめる「金の湯」は2026年3月下旬まで設備工事のため休館中ですのでご注意ください。
泊まるなら老舗旅館で
有馬温泉に泊まるなら、歴史ある名旅館で。1191年創業の「陶泉 御所坊」は有馬最古の湯宿で金泉の源泉かけ流し。明治元年創業の「中の坊瑞苑」は大人限定の隠れ家宿。創業700年の「兵衛向陽閣」は3種の大浴場すべてで金泉が楽しめる贅沢な旅館です。
9. 1泊2日モデルコース
1日目:建築とグルメを満喫
午前中に三宮駅に到着したら、まずシティーループバスで北野異人館へ。風見鶏の館、萌黄の館、うろこの家を巡り、神戸北野ノスタでランチ。午後はフロインドリーブ本店で建築カフェを堪能したら、旧居留地を散策。商船三井ビルや旧居留地38番館の近代建築を眺めながら、南京町へ。老祥記の豚まんや焼き小籠包で食べ歩きを楽しんだら、メリケンパークへ移動してBE KOBEモニュメントで記念撮影。リニューアルした神戸ポートタワーに上って夕景を眺め、ハーバーランドで港の夜景を楽しみましょう。
2日目:有馬温泉とスイーツ巡り
朝一番で有馬温泉へ。銀の湯か太閤の湯で温泉を満喫し、温泉街を散策。炭酸せんべいや有馬サイダーなど、温泉街ならではのお土産もチェック。昼過ぎに三宮に戻ったら、神戸三大パティスリー巡りへ。ラヴニュー、モンプリュ、アキトのうちお好みの店でケーキを堪能。最後に三宮の駅ナカでイスズベーカリーやケルンのパンをお土産に購入して、帰路につきましょう。
まとめ:建築とグルメと温泉、神戸は全部がデザインされた街
1泊2日の神戸旅行、いかがでしたでしょうか。明治の洋館建築に心を奪われ、教会カフェで至福のひとときを過ごし、南京町で胃袋を満たし、神戸スイーツで甘い時間を過ごし、有馬温泉で体を癒す。神戸は、街全体がひとつの美しいデザインのように、建築・グルメ・温泉がバランスよく調和した街です。
神戸商船三井ビルの大正ロマンを味わえるのは2027年まで、風見鶏の館はリニューアルしたばかり、北野ノスタは2024年にオープンしたばかり。今の神戸には「今だから見られる」風景と「今だから出会える」新しい魅力が共存しています。
コンパクトな街に、これだけの魅力が詰まっている神戸。次の旅先に迷ったら、ぜひ候補に入れてみてください。デザインを愛するあなたの心に響く風景が、きっと見つかるはずです。